2026年11月07日
こんにちは! 院長の渡邊です。
歯科医院で定期的にクリーニングを受けている方の中には、診療後の明細書に
「SPT」や「歯周病継続支援治療」という言葉を見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「SPTって何の略?」
「普通の歯石取りとは何が違うの?」
「歯周病の治療は終わったのに、なぜ3か月ごとに通う必要があるの?」
今回は、こうした疑問について、2026年6月の診療報酬改定による変更点も含めて、わかりやすく解説したいと思います。
実は、この歯周病継続支援治療(SPT)は、歯周病の治療によって改善したお口の健康を、長期的に守っていくための大切な治療なのです。
SPTとは? 2026年6月から名称が変わりました
SPTとは、Supportive Periodontal Therapy(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)の略称で、日本語では「歯周病安定期治療」と呼ばれてきました。
歯周病の基本的な治療を終え、症状が落ち着いた患者さんに対して、歯周組織の状態を維持するために継続的に行う治療です。
従来、健康保険の制度では、
・歯周病安定期治療(SPT)
・歯周病重症化予防治療(P重防)
という2つの治療が区別されていました。
しかし、2026年6月の診療報酬改定により、これらが統合され、**「歯周病継続支援治療」**という名称になりました。
少し難しい名前ですが、簡単に言えば、歯周病や歯肉炎が悪化しないように、歯科医院で継続的に管理していくための治療です。
名前や制度は変わりましたが、歯周病の状態を長期的に安定させるという目的は変わりません。
どのような患者さんが対象になるの?
歯周病継続支援治療は、主に歯周病の基本的な治療を終えた後、継続的な管理が必要と判断された患者さんが対象です。
具体的には、次のような状態が挙げられます。
① 深い歯周ポケットが一部残っているものの、状態が安定している方
歯周病の治療を行っても、すべての歯周ポケットが完全に浅くなるとは限りません。
例えば、4mm以上の歯周ポケットが一部に残っていても、出血や腫れなどの炎症が落ち着き、歯周病の進行が停止していると判断できる場合があります。

このような方は、現在の安定した状態をできるだけ長く維持することが大切です。
② 深い歯周ポケットはないものの、歯ぐきに炎症や出血が残っている方
一方、歯周ポケットがすべて4mm未満であっても、部分的に歯ぐきの炎症や、検査時の出血が認められることがあります。
こうした炎症を放置すると、将来的に歯周病が進行する可能性があります。
そのため、歯周病が悪化する前に、継続的なクリーニングやブラッシング指導などを行い、重症化を予防していきます。
つまり、歯周病継続支援治療は、すでに進行した歯周病の方だけでなく、比較的軽度な炎症が残っている方にとっても大切な治療なのです。
なお、実際の対象となるかどうかは、歯周組織検査の結果や、それまでの治療経過などを踏まえて判断します。
なぜ「継続的に」診てもらうことが大切なの?
今回、最もお伝えしたいのが、この「継続的に」という部分です。
歯周病は、必ずしも痛みや腫れといった自覚症状を伴って進行するわけではありません。
ご自身では何も変わっていないと思っていても、歯周ポケットが少しずつ深くなっていたり、歯ぐきの炎症が増えていたりすることがあります。
例えば、ある日の歯周組織検査で、奥歯に5mmの歯周ポケットが見つかったとします。
この5mmという数字だけでは、現在の状態を十分に判断できないことがあります。
以前は7mmだったポケットが5mmに改善しているのであれば、治療によって良い方向に向かっていると考えられます。
一方、以前は3mmだったポケットが5mmになっているのであれば、歯周病が進行している可能性を考える必要があります。
同じ5mmという検査結果でも、それまでの経過によって意味が大きく異なるのです。
だからこそ、歯周病の管理では、一度の検査結果だけではなく、過去の状態と比較することが非常に重要になります。
定期的な歯周組織検査やレントゲン撮影にも意味があります
歯周病継続支援治療では、クリーニングだけでなく、歯周組織の状態を定期的に評価することも大切です。
歯周組織検査では、
・歯周ポケットの深さ
・検査時の歯ぐきからの出血
・歯の動揺の有無
・プラーク(歯垢)の付着状態
などを確認します。
また、必要に応じてレントゲン撮影を行い、歯を支えている骨(歯槽骨)の状態も確認します。
レントゲン撮影は毎回必要というわけではありませんが、過去の画像と比較することで、骨の吸収が進行していないかなどを評価することができます。
こうした検査結果を蓄積することで、歯周病の状態を「点」ではなく「線」で捉えられるようになります。
歯周病の管理においては、この経時的な変化を見逃さないことが重要です。
歯周病継続支援治療(SPT)では、実際に何をするの?
歯周病継続支援治療では、患者さんのお口の状態に応じて、さまざまな処置を行います。
主な内容としては、
・歯ぐきの状態や磨き残しの確認
・歯磨き方法や清掃用具についてのアドバイス
・歯石やプラークの除去
・専用の器具を使用した歯面のクリーニング
・必要に応じた歯周ポケット内部の清掃
・咬み合わせの確認や調整
などが挙げられます。
患者さんから見ると、毎回同じようにクリーニングをしているように感じられるかもしれません。
しかし、その目的は単に歯をきれいにすることだけではありません。
前回と比べて歯ぐきの状態が変化していないか、悪化している部分はないかを確認し、必要な対応を行うことも大切な役割なのです。

歯周病が悪化したら、どうなるの?
歯周病継続支援治療を受けていれば、絶対に歯周病が進行しないというわけではありません。
どれだけ丁寧に管理していても、部分的に炎症が強くなったり、歯周ポケットが深くなったりすることがあります。
そのような場合には、現在の継続支援治療をいったん中断し、必要に応じて積極的な歯周病の基本治療へ戻ることも検討します。
例えば、
・SRP(スケーリング・ルートプレーニング):歯ぐきの中に付着した歯石や汚染物を除去する治療
・FOP(歯肉剥離掻爬手術):歯ぐきを開き、通常の器具では清掃が難しい深い部分を直接確認して清掃する歯周外科治療
などです。
もちろん、すべての患者さんにこうした治療が必要になるわけではありません。
大切なのは、悪化している部分を早期に発見し、必要な治療を適切なタイミングで行うことです。
「定期的に通っているから大丈夫」ではなく、「定期的に通っているからこそ、変化に早く気づける」ことが、継続支援治療の大きなメリットだと考えています。
歯周病継続支援治療(SPT)は何か月ごとに受けるのがいいの?
歯周病継続支援治療の通院間隔については、患者さんからよくご質問をいただきます。
一般的には、3か月程度をひとつの目安としてご案内することが多いですが、すべての方に同じ間隔が適しているわけではありません。
例えば、
・歯周ポケットが深い部分が残っている
・歯ぐきからの出血が多い
・歯石やプラークが付着しやすい
・過去に重度の歯周病を経験している
・セルフケアが難しい部分がある
といった場合には、より短い間隔での管理が望ましいこともあります。
健康保険の制度上、歯周病継続支援治療は原則として約3か月ごとの算定となりますが、
一定の施設基準を満たした歯科医院などでは、必要に応じて毎月、あるいは2か月ごとの治療も可能です。
当院では、口腔管理体制強化加算(口管強)に関する施設基準の届出を行っており、患者さんそれぞれの歯周病の状態に応じて、適切な通院間隔をご相談いただけます。
ただし、短い間隔で通えば通うほど良いというわけではありません。
歯周病の状態が安定しているか、どの程度の再発リスクがあるか、日常のセルフケアがどの程度できているかなどを総合的に判断することが大切です。
予防歯科の観点から、通院間隔についての別記事もございますので、良ければご参照ください。
ご自身に適した通院間隔については、かかりつけの歯科医院で相談してみてくださいね。
痛みがなくても、歯周病の管理は必要?
「特に困っていないのに、歯医者に通う必要があるの?」
そう感じられる方もいらっしゃると思います。
しかし、歯周病の厄介なところは、痛みなどの自覚症状が乏しいまま進行することがある点です。
歯ぐきが大きく腫れたり、歯がグラグラしたりする頃には、すでに歯を支える骨が失われていることもあります。
一度失われた歯周組織を、完全に元の状態へ戻すことは容易ではありません。
だからこそ、症状が出てから治療を始めるのではなく、症状が落ち着いているうちから良い状態を維持することが大切なのです。
また、歯周病はお口の中だけの問題ではなく、糖尿病などの全身疾患とも関連があることが知られています。
お口の健康を維持することは、将来の健康を考えるうえでも大切な取り組みです。
当院が大切にしている、継続的な歯周病管理
当院では、歯周病の治療が終わった後の継続的な管理も大切にしています。
私たちが重視しているのは、単に決められた間隔でクリーニングを繰り返すことではありません。
患者さん一人ひとりの歯周病の状態を把握し、以前の検査結果と比較しながら、小さな変化にも気づけるようにすることです。
そして、必要があれば治療方針を見直し、積極的な治療へ移行することも検討します。
歯周病の状態は、年齢や生活習慣、全身の健康状態などによっても変化します。
だからこそ、長い期間を通じてお口の状態を把握できる「かかりつけ歯科医院」の存在には、大きな意味があると考えています。
当院では、患者さんごとの状態やリスクに応じた通院間隔をご提案し、無理なく継続していただける歯周病管理を目指しています。
歯の喪失と健康寿命に関連が示されていたり、歯周病と認知症との関連が指摘されていたりと、
歯周病のケアを継続的に行うことが、健康な生活を長く維持することに貢献してくれると確信しています。
まとめ|歯周病継続支援治療(SPT)は、歯を長く守るための継続的治療です
2026年6月から、従来の「歯周病安定期治療(SPT)」と「歯周病重症化予防治療」は、「歯周病継続支援治療」に統合されました。
名称は変わりましたが、その目的は、歯周病の治療によって改善した状態を維持し、再発や重症化を予防することにあります。
そして、そのために大切なのは、定期的なクリーニングだけではありません。
継続的な検査と評価によって、歯周病の小さな変化を見逃さず、必要なときに適切な治療を行うことです。
歯周病は、一度治療したらそれで終わりという病気ではありません。
今ある歯を、これから先もできるだけ長く健康な状態で使い続けるために。
定期的な歯周病管理を、ぜひ大切にしていただければと思います。
西宮市 夙川・苦楽園エリア、ならびに芦屋市、尼崎市、神戸市、大阪府近郊エリアにて、
歯周病の治療や定期的なメインテナンスをご希望の方は、是非当院けいデンタルクリニックまでお気軽にご相談くださいね。
院長 渡邊 翔太