2026年9月20日
こんにちは! 院長の渡邊です
今回は、最近発表された歯科に関する興味深い研究をご紹介します。
テーマは、**「歯周病と認知機能の関係」**です。
この前の記事でも、「歯周病と認知症の関係」の可能性についてご紹介しましたが、今回は、
やはりこのテーマについて、もっと強く裏付ける研究が進んできたという続きのお話となります。
歯周病というと、「歯ぐきが腫れる」「歯がぐらぐらする」「歯を失う原因になる」といった、お口の中だけの病気というイメージが強いかもしれません。
しかし近年、歯周病は糖尿病や心血管疾患など、全身の健康との関連についても研究が進められています。
そして現在、注目されているテーマのひとつが、認知機能や認知症との関連なのです。
歯周病と認知機能には関連がある?
これまでの研究から、
「歯周病がある人では、認知機能の低下や認知症との関連がみられる」
ことが報告されています。
一方で、これだけでは「なぜ歯周病と脳が関係するのか」という仕組みまでは十分に分かっていませんでした。
2026年9月に報告された福岡歯科大学の研究では、
歯周病の代表的な原因菌のひとつである**Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis:Pg菌)**を用いたマウスの実験から、そのメカニズムの一端が示されました。
研究では、歯周病によって活性化された免疫細胞が歯周組織から脳へ移動し、
脳内の神経回路に影響を与えることで、記憶や学習などの認知機能に影響する可能性が示されています。
つまり、
「お口の中で起こっている慢性的な炎症が、免疫反応を介して脳にも影響する可能性がある」
ということです。
もちろん、今回の研究はマウスを用いた基礎研究ですので、「歯周病があれば認知症になる」という意味ではありません。
しかし、これまで疫学研究などで指摘されてきた「歯周病と認知機能の関連」を説明する仕組みのひとつとして、非常に興味深い研究だと思います。

歯周病菌は、お口の中だけにいるわけではありません
そもそも歯周病は、歯周病菌に対する炎症反応によって、歯ぐきや歯を支える骨などが少しずつ破壊されていく病気です。
歯周病が進行すると歯ぐきから出血しやすくなり、その部分から細菌などが血液中に入り込む**「菌血症」**が起こることがあります。
特別なことではなく、歯周病がある場合には日常の歯磨きや食事などでも、一時的な菌血症が起こる可能性があります。
こうしたことから現在では、歯周病を単に「歯ぐき・骨だけの病気」と考えるのではなく、
慢性的な炎症や細菌が全身へ与える影響についても研究が進められています。
実は「脳からお口へ」の影響も
もうひとつ重要なのが、歯周病と認知機能の関係は一方向だけではない可能性があるということです。
認知機能が低下すると、
・歯磨きをすることを忘れてしまう
・細かい部分まで歯を磨くことが難しくなる
・入れ歯の着脱や清掃が難しくなる
・定期的な歯科受診が途切れてしまう
など、お口の健康を維持すること自体が難しくなる場合があります。
その結果、歯周病が悪化する可能性があります。
つまり現在は、
歯周病 → 認知機能への影響
だけでなく、
認知機能の低下 → お口の管理が難しくなる → 歯周病の悪化
という、**お口と脳の「双方向の関係」**が注目されています。
だからこそ、元気なうちから歯周病を管理する
認知症にはさまざまな原因やリスク因子があり、歯周病だけで予防できるものではありません。
ですから、「歯周病を治療すれば認知症を予防できる」と単純に考えることは、現時点ではできません。
それでも、歯周病をきちんと治療し、できるだけ多くの歯を健康な状態で残しておくことには大きな意味があります。
上に示したような、ややこしいメカニズムまでを細かく理解されなくとも、
歯周病の管理をすることの大切さを少しでも感じていただけましたら、それだけで十分です。
歯周病はかなり進行するまで自覚症状が出にくく、「痛くないから大丈夫」とは限らない病気です。
毎日の歯磨きに加えて、歯科医院で歯周ポケットや出血、歯を支える骨の状態などを定期的に確認し、必要に応じて歯石除去や歯周病治療を行うことが大切だ!
と、歯医者さんがいつも強調する理由を、是非受け取っていただけましたらとても嬉しいです。
お口の健康を、全身の健康につなげる
歯科医療の目的は、単に「むし歯を削る」「歯石を取る」だけではありません。
自分の歯でしっかり噛み、食事を楽しみ、お口を健康な状態に保つこと。
それが長い人生の中で、健康的な生活を支えるひとつの要素になると考えています。

以前にも、残存歯の本数と健康寿命との関係に関する記事をご紹介していますので、良ければご一読ください。
今回ご紹介した研究も、「お口の健康と全身の健康は決して別々ではない」ということを改めて考えさせてくれる研究だと思います。
当院 けいデンタルクリニックでは、歯周病の検査・治療はもちろん、治療後の定期的なメインテナンスにも力を入れています。
西宮市 夙川・苦楽園、芦屋市、尼崎市、神戸市、および大阪府近郊エリアなどで、
最近歯科医院を受診していない方や、歯ぐきからの出血・腫れなどが気になる方は、一度歯周病のチェックを受けてみてください。
歯を守り、笑顔を育み、生活を豊かに
を医院理念として、
これからも当院では、お口の健康を通して皆さまの健康的な生活をサポートしていきたいと心より思っております。
皆さまのお問い合わせ、ご相談をいつもお待ちしております。
院長 渡邊 翔太
参考
・福岡歯科大学研究グループ「歯周病が認知機能障害を引き起こす『口腔-脳連関』」に関する研究報告
・国立長寿医療研究センター「歯周病と認知症の関連について」
・国立長寿医療研究センター「認知機能と歯周病についての研究成果」